先の石亭での戦では蜀軍が勝利し、妲己は逃げ帰っていった。
 その戦に大きく貢献した義勇軍である達は、劉備から一部の領地を譲ると言われたのだが、

 「あ、土地はいいんです。お金下さい。」
 「馬鹿めがあぁぁぁー!!!!」
 「ぅぶわ鹿めがあぁぁぁー!!!!」

 というの一言で領地はお金に換わった。
 政宗と司馬懿の怒声が重なったのは無理もない。
 土地さえ手に入れば、後は上手いこといけば金が手に入る。
 そう考えていた政宗と司馬懿である。
 の何も考えていない(というかお金のことしか考えていない)発言に二人は叫ばずにはいられなかった。

 「まぁいーじゃん。私、蜀の真横に本拠地を作るつもりなんてないし。」
 「確かに、そこを本拠地とするのは少々危険だが・・・。」
 「でしょ!?司馬懿も諸葛亮の隣なんてきっと嫌だと思ったんだー。いやぁ、仲間思いだよね私!」
 「誰が仲間だ!!大体貴様・・・・・そうだ、総大将だ。」
 「え、だから私は総大将じゃないって・・・・。」
 「そうなのか?」

 珍しく呂布が声を上げた。
 呂布ものことを総大将だと思っていたのだろう。
 「では誰が総大将なのだ?」と謙信と一緒に首を傾げている。

 「いや、お前だろう。そもそもお前が儂らを集めだしたんじゃろうが。」
 「政宗が総大将じゃないの?」
 「だからお前だと言っておるだろうが!!」
 「いや別に、やってもいいけど・・・・。」

 総大将がいないということは少々、いやかなり問題がある。
 そもそも総大将というのは全軍を指揮する大将のことである。
 引っ張っていく者がいなければ、動くことはままならない。
 しかし、総大将は武門の棟梁が自ら務めるか、或いはその一門ないし重臣など、身分の高い者の中から選抜されることが多い。
 この時代も国も違った者達が集まった中で身分だ重臣だ、などは関係がない。
 何よりここに集っているのはそこらへんの武将達を寄せ集めて出来たメンバーである。
 それぞれが総大将である人物であったからこそ、今現実に総大将がいないということに気付くまで時間がかかったのかもしれない。

 「うーん。それじゃ私から民主主義による提案をします。」
 「言ってみろ。」
 「それぞれが推薦して、票の多かった人が総大将になる!つまり多数決ね。それなら皆文句ないでしょう。」
 「ほう、貴様にしては中々の提案だな。・・・・・・奇抜だが。」
 「はい司馬懿黙るー。ってか、さっきから偉そうなんですけどー。」
 「貴様よりは智謀があるわ。」
 「私は司馬懿より強いですー。」
 「いい加減にしろ二人とも!とにかくの言う提案でやってみるのが一番じゃ。で、具体的にはどうするのだ?」

 政宗が二人を宥めながらに問うと、は勢いよく椅子から立ち上がった。
 ちなみに、5人がいる場所は例の蕎麦屋がついた宿である。
 すっかり顔なじみとなってしまった達が宿へ来ると「いらっしゃいませー」ではなく、「おかえりなさーい」と帰ってくるほどなのだから、政宗の金はかなりこの宿に貢がれているだろう。

 「うん、具体的には・・・・・」
 「天ぷら定食5人前お待たせしましたー。」
 「っと、そういえば全員天ぷら定食だっけ。・・・そうだ!総大将になる人にせーので一つずつ天ぷらをその人の皿の上にのせる!つまり推薦式にするのよ!」
 「なぜ天ぷらなのだ。」

 結局いつもの宿屋の下にある蕎麦屋で昼食を摂る5人。
 お金が入ったことにより、いつもより頼むメニューが若干豪華である。
 呂布は蕎麦とご飯がセットになっていることに喜んでいたし、謙信はお金が手に入ったので酒を一日一升と許され早速一杯ぐいっとやっていた。
 そんな天ぷら定食にのっている天ぷらは海苔、しし唐、かぼちゃ、さつま芋、れん根、しいたけ、そしてみんな大好き海老である。

 「いーい、せーので天ぷらを一つ総大将にと思う人にわたすのよ。いーい、せーの!」
 「・・・・・。」
 「・・・・・。」
 「・・・・・。」
 「・・・・・。」
 「何で皆誰にも天ぷらをわたさないの?」
 「そういう自分もじゃろう。」
 「や、適任がいないなぁと思って。っていうか誰が天ぷらを渡すかこの野郎!みたいな。」
 「それじゃ意味がないだろう。」
 「そうは言うけどね司馬懿、皆自分に投票したらそれこそ意味ないから。それは推薦じゃなくて立候補って言うの。わかってんの、あんた達。」
 「貴様に言われたくないわ。」

 誰も動かないので結果投票は0ゼロ。
 天ぷらの動く気配も皆無である。
 せっかくの天ぷら定食なのだ。
 誰も天ぷらを渡したくはないだろう。
 お金が手に入ったとはいえ、所有する土地があるわけではない。
 すぐに金は底つくだろう。
 それ故に今はまだまだそんなに贅沢は許されない。
 天ぷらを単品で追加するなどもってのほかなのだ。
 酒も一日一升までなのだ。

 「じゃぁもう自分に投票はなし!この人になら天ぷらをあげてもいいと思える人にちゃんと投票して!」
 「違うだろう。総大将になるべき者に天ぷらをわたすのだろう。」
 「とにかく!もう一回いくからね。せーの!」

 全員の箸が動く。
 天ぷらが動き、交差する。

 「・・・・ねぇ、なんで私の天ぷらの皿に海苔の天ぷらが大量に・・・?」
 「ほぅ、やはり貴様が総大将のようだな。」
 「ありがたく海苔を食え。」
 「酒・・・・。」
 「何で儂のところはしし唐二つなのじゃ。、お前しし唐が食べられぬのか。」
 「哀れんだような目を向けないで政宗。食べれるわよ、しし唐くらい。でもなんか苦いから嫌。」

 とりあえず一番うすい海苔の天ぷらをチョイスする辺り(誰も海老は自分の皿から動かさない辺り)、本当にその人が総大将になるべきだという考えは端からないように見える。
 というか最初の投票直後全員が自分に投票しているのだが・・・。
 仕方がないからあげた、そんな雰囲気である。
 そういうわけで、仕方がなしに総大将としてが選ばれた。
 以外全員一致である(ただし、仕方なしに)。

 「でも私、総大将ってガラじゃないし。そうね、リーダーって呼んで。」
 「意味がわからん。総大将でいいだろう。」
 「はい、総大将命令ですー。司馬懿の天ぷら一つよこせ。ってか海老くれ。」
 「誰が貴様なんかにわたすか!!」
 「ふん、命令される前に食すまでだ。」
 「酒は、渡さん。」
 「誰も謙信さんのお酒とろうなんて思ってないのでゆっくり飲んでください。っていうか、総大将命令です。みんなこれからは私のことを女王様とお呼び。」
 「さっきと変わってるじゃろうが。何が女王様じゃ!」

 かなり賑やかな食卓に、思わず店員も微笑んだ。
 最早彼らが猛将、古の軍師など誰が思うだろう。
 ただの天ぷらの取り合いである。
 そんな昼食会議で、今回は総大将が決まった!
 一日一歩、とにかく例えミリ単位でも進むことが大切です。
 前進あるのみ。

 「鬼神命令だ。貴様の海老をよこせ。」
 「何を勝手に取っておるんじゃ!!というか、鬼神命令とは何じゃ呂布!!」
 「あー、呂布いいなぁ。総大将命令です。政宗、かぼちゃの天ぷらをよこせ。」
 「貴様ら!勝手に取るなぁ!!」
 「フン、馬鹿めが。早く食べぬからそうなるのだ。」
 「良き、闘争。」
 「良いわけあるかぁー!!!」

 昼食会議もとい天ぷらの取り合いは、まだもうちょっと続きそうである。





 「会議の時間」





2008/08/25

 <作者様より>
 今回昼飯食ってるだけだった!!でも、大事なことは決められた!!それで良し・・・・としてください;






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