「私、山菜おろし蕎麦!」
 「木の葉うどん。」
 「俺は親子丼。」
 「私は天ぷら蕎麦。」
 「酒・・・」
 「は、なしでカツ丼ひとつー。」
 「酒は戦に勝ってからじゃ。今は金がないと言っておろう!」
 「・・・・闘争。」

 いつもの宿でお昼ご飯、もとい朝ごはんも兼ねているのだが時間はお昼より少し早めといったところか。
 今日も今日とて昼食しながらの会議なのである。

 「とりあえず、人数は集まったのよね。」
 「兵力は無いがな。」
 「本拠地もな。」
 「金もな。」
 「酒。」

 の一言に対して答えが沢山返ってくる。
 確かに仲間は揃いつつある。
 けれど、みんなの言うとおり兵力も本拠地も金もない。
 言わずもがな、最後の謙信の一言はスルーの方向だ。

 「そこで一つ提案なんだけど、まずは義勇軍として動くっていうのはどうかな。」
 「義勇軍?」
 「もう戦を始める気か。」

 政宗と司馬懿が少し眉をひそめた。
 確かに力や智に秀でた武将は揃いつつあるが、先も言ったとおり兵力、本拠地、金がない。
 の言う義勇軍として戦に参加することは確かにメリットもあるが、デメリットもあるのだ。
 メリットとして、名を売ることが出来る、金が多少手に入る、上手くいけば兵力も手に入る。
 けれど、デメリットとして拠点は手に入らない、参加した戦で味方に利用される点もあり、下手すればどこかの軍に所属という形で下に付かなければならなくなる可能性もある。
 達はあくまで遠呂智討伐を目的としているが、それぞれ思惑がある。
 どこの勢力にも属さない者達が集まったといっても過言ではない。

 「いーい、RPGに必要なのはね、」
 「またろーるぷれいんぐとか言うやつか。」
 「政宗は黙って。RPGに必要なのは仲間、その次に金なのよ!金がなきゃ何も始まらない。拠点を手に入れても、兵を手に入れてもそれらに見合ったお金が必要なのよ。今私たちに一番必要なもの、それは金!」
 「戦に出れば名も上がる。そのうち兵も集まってくるだろ。俺は強い奴と戦うためにここへ来たんだ。戦に参加することには賛成だ。」

 呂布がに賛同する。
 謙信もまた軍神と呼ばれるほどの戦好きだ。
 戦に出ることに異論はないだろう。
 金金と連呼することに対して多少嫌悪するものの、確かに自分たちに金が必要なのは確か。
 政宗も司馬懿もそれが完全に悪いことだとは言えず、義勇軍として戦に参加することを認めた。

 「戦って言っても今どこかで戦、あるのかな。」
 「私が遠呂智の元を去るとき、妲己が次は蜀を攻めるようなことを言っておったな。」
 「蜀、あいつらか。」

 呂布が思い出し、檄を強く握った。
 政宗も謙信も直接対峙したことがないとはいえ、名前は聞いたことがある。

 「魏はすでに我々、いや、遠呂智の存在を知っているようだった。呉は遠呂智のことは知らんだろうが、以前より守りが堅い。蜀は遠呂智のことはまだ知らぬだろうが何か察してはいるみたいだな。各地に視察を飛ばしている。」
 「妲己はその隙を狙っておるのじゃな。」
 「そうだ。」
 「よし!ならまずは・・・」
 「山菜おろし蕎麦、木の葉うどん、親子丼、天ぷら蕎麦、カツ丼お待たせしましたー。」
 「腹ごしらえよ!」

 ずるずる、がつがつ一行は運ばれてきた各々のメニューをがっつりいただき、劉備たちがいるであろう石亭へ向かうべく準備を整えた。

 「呂布、口元にご飯粒ついてるよ?」
 「・・・・・・・。」

 身だしなみも、忘れずに。










 一方蜀では、徳川家康、今川義元を加え陣を固めていた。
 石亭に現れた妲己を討つべしと、罠にかかった劉備たちは妲己討伐のため諸葛亮を本拠地に残し、石亭へと軍を進める。

 「遠呂智との戦で、私は皆に救われた・・・。次は私が皆のために働く番だ。」

 二つの軍が、石亭でぶつかる。
 妲己はすでに砦を二つ押さえていた。
 南東、北西に位置する砦である。
 そこに自分の配下を置き、特異な術を唱えさせる。
 その術のせいで、砦に近づいた者は身動きが取れない状況になってしまった。
 妲己は中央の砦に篭り、周りに配下の武将を並べ厳戒に守りに徹する。

 「っく、あの砦を何とかせねば・・・。」
 「その役目、我らにお任せあれ!」

 本陣で劉備が攻めあぐねいていると、崖の上から声高らかに響くまだ少し幼さの残る少女の声が降った。
 劉備が声の方へ視線を向ける。
 そこには5人の影が並んでいた。

 「祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、臨、兵、闘、者、皆、陣、烈!悪霊退散!!」
 「って、馬鹿めがあぁぁー!!!色々混じりすぎじゃろぅがぁー!!」
 「だって言ってみたかったんだもん。言ってみたかったんだもん!」
 「馬鹿めが。劉備たちが思いっきり引いておるではないか!」
 「あのさぁ、政宗と司馬懿って台詞が被るからもうちょっと台詞に特色を出していこうよ。わかり辛いんだよ。」
 「余計なお世話じゃ!!」
 「、最後の九字の呪法だが二文字足りぬぞ。」
 「え、そうなの?謙信公詳しいねー。」
 「意味のわからんことをほざくな!さっさと行くぞ!」
 「あ、呂布待ってよ!」

 一気に賑やかになる本陣。
 劉備、その他蜀軍の兵たちの口がふさがらないのも無理はない。
 こいつら何しに来たの?邪魔しに来たの?っつか、何者なの?
 そんな疑問が頭上に浮かんでいる。
 崖から飛び降りてくる5人(ただしの場合、下で呂布が受け止めた)は、劉備の前にまた横一列に並ぶ。
 そして真ん中に立つが「はい!」と、勢いよく片手を上げた。

 「義勇軍、ゴニンジャーです!」
 「え、ごにん・・・・・すまぬ。もう一度言ってくれぬか?」
 「ゴニンジャ」「劉備よ、我らは義勇軍として遠呂智と闘う者と共に戦うためここへ来たのだ。」
 「し、司馬懿!まだ私たちの自己紹介が・・・」
 「うるさい、馬鹿めが!貴様は少し黙っていろ!!」

 司馬懿に一括され、は後ろでしゅんと項垂れた。
 の頭の中では毎週日曜日、朝の特撮番組のヒーローものの登場シーンのように自分たちも!と気合いを入れて名前まで作っていたのだ。
 例えセンスがないとわかっていてもやってみたかった登場シーンその2である。(登場シーン1は強行した)
 ちなみに、ゴニンジャーの名前の由来は、「5人じゃー!」をカタカナにしただけ、つまり、政宗、司馬懿、謙信、呂布、あわせて5人、たったそれだけのことである。

 「とにかく、俺は勝手に戦わせてもらう。邪魔はするなよ。」
 「闘争、楽しまん。」
 「あ、私も行って来ようっと。司馬懿は劉備さんに戦況を聞いて策を練ってよ。私はとりあえず砦の解除に向かうから。その後また支持を頂戴。」
 「待て!お前はあんまり先陣へ出るな!こら、!!」

 呂布、謙信は各々勝手に散り散りになり敵将を撃つべく進んで行き、で勝手に砦の解除へと敵陣へつっ込んで行き、それを政宗が止めるべくに着いてく。
 残された司馬懿は劉備の隣で呆れるように肩を落とした。

 「司馬懿殿は遠呂智軍に着いていると聞いたが・・・。」
 「あの女にほだされてな。今は義勇軍だ。戦況を教えろ。」
 「そうか。」

 劉備は思わず苦笑した。
 劉備と司馬懿のタッグである。
 水魚の交わりとまで言われた劉備と諸葛亮のペアは、もちろん戦でもそのお互いの才を発揮できただろう。
 だが、諸葛亮とは正反対の司馬懿が今回軍師なのである。
 諸葛亮が聞けば眉を寄せ、とてつもなく嫌な顔をしそうな状況であるが、今は仕方がない。
 それに、諸葛亮は存外冷酷な面も持ち合わせている人物である。
 そんな諸葛亮と共にいた劉備だ。
 司馬懿と劉備、もしかしたら案外良いコンビとなるかもしれない。

 「伝令、呂布軍が北東砦を制圧いたしました!」
 「伝令、軍が南西砦を制圧いたしました!」

 司馬懿と劉備が策を練っている合間に、次々と吉報が届く。

 「おぉぉ、もう砦を制圧したか。呂布が強いことは知っているが、あの女子、殿とやらもかなりの使い手なのだな。」
 「あの遠呂智が直々に呼び寄せた人物だからな。それなりには使えるだろう。」
 「そう・・・なのか?」

 が、そう良いことばかりではないのが戦。
 何が起こるかわからないのが戦である。

 「ただいまー。」
 「またか。」
 「殿!!?」

 砦を制圧したのも束の間、が本陣に帰ってきた。
 全身血だらけである。

 「もー無理。痛い。死ぬ。死んじゃう。痛すぎて死ぬ。血が止まんないー。」
 「劉備よ、すまぬがこやつに応急手当を頼む。」
 「わかった。すぐに用意させよう。」

 本陣のテントの中では包帯ぐるぐる巻きにされていた。
 その間に遠呂智軍にいたとき同様、小言が始まる。

 「だから敵陣には一人でつっ込むなと何回言えばわかるのだお前は。何のために政宗の奴が着いていったと思っておるのだ。貴様は確かに一撃でどんな敵でも仕留められるほど強いが、同時に一撃でも当たれば致命傷となるほど弱いということもいい加減思い知れ、馬鹿めが。」
 「あのさ、そんなにたくさん喋ったら疲れない?」
 「話を聞かぬか馬鹿めがー!!!!!大体、我らの総大将なのだから、その辺ももっと自覚してだな・・・」
 「え、私総大将じゃないよ?」
 「な・・・に?」

 も司馬懿も、そして一緒にテントに入って黙って話を聞いていた劉備も固まった。
 総大将を勘違いする軍なんて聞いたことがない。
 けれどはっきりと司馬懿はを総大将だと思っていたし、もまた自分が総大将などとは思ってもいない。

 「司馬懿じゃないの?」
 「私は軍師だろうが。」
 「政宗?」
 「あやつはお前を死なせまいと追いかけていたではないか。どこの総大将が味方の武将を追いかける。」
 「呂布?」
 「呂布も上杉もお前が仲間に引き入れたのではないのか。」
 「え・・・じゃぁ・・・・・・・。」
 「・・・・・・・まさか。」
 「え、うちの軍って、総大将が・・・・いない?」

 なんと大きなミス!
 達の軍には総大将がいなかった!!
 戦に出て始めて知る事実である。

 戦とは、何が起こるかわからない。
 そう痛切した劉備であった。





 「総大将問題」





2008/08/10

 <作者様より>
 痛切したのは劉備でした;司馬懿は言葉もないです。呂布はコレを知ったらきっと鼻で笑うだろうし、謙信様はきっと無関心。政宗はきっと「馬鹿めがぁ!」と叫ぶことでしょう。ちなみに、山菜おろし蕎麦→ヒロイン、木の葉うどん→政宗、親子丼→呂布、天ぷら蕎麦→司馬懿、カツ丼→謙信となっています。呂布はうどんとかそばをすするイメージじゃなかったのでご飯もので。






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