「はい!リーダーは大阪城に行きたいです!!」
 「ふん、ならさっさと行くぞ。」
 「闘争。」
 「待て凡愚共。、何で大阪城なんだ。」
 「あそこは織田信長や豊臣秀吉、かの名将たちがいるのだぞ。たったこれだけの人数で何が出来るというんじゃ。」
 「何って観光に行くだけだよ。」
 「馬鹿めがあぁー!!!!」
 「馬鹿めがあぁー!!!!」

 今日も元気に司馬懿と政宗の怒声が蕎麦屋に響き渡っていた。
 朝食をいつもの蕎麦屋で終えた5人は、いよいよ本拠地をどうするかという話をしていた。
 そろそろ本腰を入れて本拠地を手に入れなければこれ以上軍を拡大することは出来ないからだ。
 金も・・・・・減っていく一方だ。
 そんな中、先刻総大将もといリーダーとなったが大きく手を上げて進言した。
 大阪城を観光したい。

 「貴様話しを聞いていなかったのか、馬鹿めが。」
 「今は観光がどうのこうの言っている場合ではないわ馬鹿め。」
 「馬鹿馬鹿うるさいよ、馬鹿共めが。」
 「の言うとおりだ。それに俺は戦が出来ればそれでいい。さっさと行くぞ馬鹿めが。」
 「闘争は、愉悦。儂も行こうカバめが。」
 「謙信さん、馬鹿です。カバじゃないです。」
 「そうか。」
 「フ、フハハハハハ!!!」
 「し、司馬懿、落ち着け!!」

 錯乱した司馬懿がビームを討ちまくり、蕎麦屋を破壊。
 金は一向に減るばかりだ。
 錯乱したままの司馬懿を引きずり、一行は大阪城へと向かう。
 常識的見解を持つ政宗も、もう説得を諦めたらしい。
 をリーダーにしたのが悪い、そもそも遠呂智を裏切ってについてきたのが悪い、こんな世界を作り出した遠呂智が悪い、この世を作った神が悪い・・・。
 政宗は悟りを開きかけていた。



 一方大阪城では、達がたった将5人で大阪城を乗っ取りに来たと織田勢は物見より伝令を受けていた。
 5人が物凄い形相で馬を飛ばしてこちらに向かってくるのだ。
 おまけに以外は名の知れた名将ばかり。
 そりゃ物見もなんかすごい武将が乗り込んできた!と勘違いしてしまうのも、致し方ない。

 「謙信公に伊達政宗、それに古の二大軍師の一人である司馬懿に、鬼神の呂布・・・・・か。たった5人の将とはいえ、物凄い濃いメンバーが揃っとるなぁ。信長様、いかがいたします?」

 物見より中進を受けた後の豊臣秀吉こと羽柴秀吉が、奥に座っている織田信長へと指示を仰いだ。
 その隣には森蘭丸、濃姫、そして明智光秀が控えていた。

 「5人の内司馬懿、伊達政宗、そしてという人物は元は遠呂智軍にいたという情報が入っています。今は義勇軍として動き、蜀が遠呂智軍と戦を行った時に蜀の味方に付いたようですが・・・・。」

 光秀がそう言って信長を仰ぐ。
 光秀が今言った情報は、ほんのついさっき入ってきた情報だった。
 遠呂智は一度滅びた。
 なのにその残党と思われる遠呂智軍が急激に軍を増やし、辺りを支配し始めた。
 各国では遠呂智について視察をとばしたり、情報を掴もうと動き始めた矢先のことだった。
 妲己の出現。
 これは遠呂智の復活を意味すると各国はふんだ。

 「何にしろ、たった5人とはいえ軍を進めて攻めてきているなら私たちの敵ってことでしょう?」
 「何を考えているのかは計りかねますが・・・・。」

 濃姫は達を敵だと切り捨てたが、蘭丸は相手の意図を掴みかね頭をひねっていた。

 「ックク、面白い。出丸の砲門を開けよ。」

 織田勢も砲撃の準備に入り、いよいよ戦が始まろうとしていた。
 達は一向に戦をする気はないのだが、観光を楽しみにしているとは裏腹に、もともと無表情でむっとした顔をしている上杉謙信に呂布、不機嫌な司馬懿と政宗は顔を曇らせイラついた表情をしていた。
 その以外の武将を見れば、いかにも今から戦が始まりそうな雰囲気では、あると言われても否定は出来ないような形相だろう。

 「ね、なんか大阪城の方騒がしいんだけど。」
 「・・・・・相手はどうやら我々が攻めてきたと勘違いしているらしいな。」
 「織田勢は戦闘態勢だ馬鹿めが。」
 「闘争は、愉悦。」
 「ふん、暇つぶしにもならん。」
 「まぁ、いいや!正面突破よ!」
 「よくないわ馬鹿共めがあぁー!!!!!」
 「慣れてきた自分が嫌になるが、司馬懿よ・・・・諦めた方が精神的に楽じゃぞ。」

 けれど、相手が戦闘態勢だろうが観光体勢だろうが、達にはお構いなしらしい。
 そのまま敵陣突破の勢いで、大阪城へと馬を走らせるのだった。



 「門が全部閉まってるね。」
 「とにかくを一人にするな。こいつは総大将だからな。」
 「司馬懿、リーダーだってば。」
 「は勝手に先陣に出てしまうからな。三人一組になって行動しろ。」
 「あれ、無視?っていうか私そんな子供じゃないんですけど。」
 「子供より性質が悪いわ。」

 司馬懿が吐き捨てるように言った。
 一行はぎりぎり大阪城の門が見える位置で馬を止め、策を練る。
 策と言うよりについて、だが。
 ここには本陣がない。
 蜀の味方に付いていたときのように、遠呂智軍にいたときのように、が傷ついて帰ってくる場所がないのだ。
 例え大阪城を安全に出ることが出来たとしても、手当てをする者もいないし、を護衛する者だっていない。
 それには彼らの総大将となったのだ。
 が敗れればそこで戦は終ってしまう。
 が先陣に出なければいいのだが、残念ながらを止められる者はここには一人もいない。
 というより止めようとする人物が二人(司馬懿と政宗)しかいない。

 「いいか、武将にはまず三つの種類がいるのだ。素早さ、破壊力、技のキレそれぞれを持つ。」
 「その三つの種類を持つ武将を上手く組み合わせれば、戦場で各々の特性を生かして戦が出来る、というわけじゃ。」

 司馬懿と政宗の説明に、達3人はふむふむと首を縦に振りながら聞く。
 そこでは首を傾げた。

 「私はどのタイプになるの?」
 「貴様は性格的に見ると素早さだろう。」
 「何で?」
 「呂布のようにそこまで力はない。けれど何か技を使うこともないだろう。貴様はいつも真っ直ぐに突っ込んでいくからな。」
 「なるほど・・・・っていうか、もしかして貶されてる?」
 「もしかしなくても嫌味だ。気付け。」
 「や、そこは『さぁな』とかって言葉を濁す所じゃないの!?何あっさり肯定してしかも気付けとか上から目線?」
 「だが、ここにその三つの種類を持つ武将がちゃんといるのか?」
 「え?」
 「何?」

 呂布の言葉に一行が固まる。
 謙信はパワー、呂布もパワーだ。
 司馬懿は政宗と同じスピード。
 そしてもスピードだ。

 「技がおらんな。」
 「!!!」

 軍には技を特徴とする武将がいなかった!
 謙信公の一言で司馬懿はダメージを受けた!

 パワーとスピードしかいないのなら仕方がない。
 にはパワーの二人、謙信と呂布が付くことになった。

 「私、一人でも大丈夫なのに・・・・。」
 「、これを被っておけ!」
 「重っ!・・・これ、政宗の兜?」

 の頭にずしりと重たいものが被せられた。
 少し視界が狭まる。
 の頭には政宗の愛用している雄大な弦月の前立が特徴的な兜が被せられていた。

 「お前は儂らの総大将じゃ。いいか、それを忘れるな。」
 「う、うん。」

 政宗の真剣な表情に、も思わず頷いた。
 リーダーだよ、など茶化す雰囲気ではない。
 はもう負けることが許されない身となったのだ。

 「どうせお前たちのことだ。正面から敵陣突破していくのだろう。を頼んだぞ。」
 「ふん、邪魔なカスどもは斬るだけだ。」
 「先に大阪城天守にて待つ。」

 、呂布、謙信の3人はそう言って大阪城北西門を、その門を守っている真田信之ごとぶった斬りながら進んでいった。
 政宗と司馬懿は砲撃を停止させるために大砲が置いてある出丸へと進む。
 二手に分かれて達は大阪城へと攻め入っていった。

 「さて、儂らは出丸の門をこじあけに行くか。」
 「全く、軍師の私が前線に出なければならんとはな。」
 「不思議なものじゃ。この世界もそうだが、儂にとっては不思議な存在じゃ。」
 「そうだな。こんな変な面子を集められるあいつはある意味遠呂智よりもすごいかもしれんな。」

 政宗と司馬懿が出丸へと馬を走らせる。
 二人は出丸を火の海にするつもりだ。
 そうすれば砲撃も止めることが出来、兵たちをこっちへ引き寄せることが出来る。
 あとは達に任せておけばいい。

 達はただ正面突破。
 正門から門番を蹴散らし、門をこじ開け中へと進入した。
 の隣には常に謙信と呂布が着いている。
 正面突破を試みた3人は、かなりの数の敵に囲まれていたにも関わらず、には一太刀も当たらない、攻撃は届かない。

 「ちょ、止めてよ!謙信さんも呂布も、結構攻撃当たってるじゃん!庇わなくてもいいよ。っていうか、こんなまとまってなくていいから!」

 への攻撃は全て謙信と呂布が受け止める。
 の代わりに攻撃を受ける。
 その度に、刃の重なる金属音、そしてたまに・・・・血が飛び散る。
 はたまらなくなって二人を止めようと叫んだ。
 だって武将だ。
 それには一発で敵を戦闘不能にする力がある。
 がもっと前に出たほうが戦は早く終わることは百も承知だ。

 「ふん。ここにあの二人がいたら、貴様また怒鳴られていたぞ。」
 「りーだー、なのだろう。」
 「仕方なしに決まったリーダーじゃん!そこまでしなくていいよ!」
 「悪いが、貴様の命令でもそれはきけんな。」
 「主は、我らの総大将なのだから、な。」
 「謙信さん、呂布・・・・。」

 出丸が炎に包まれる。
 砲撃が止まる。
 織田勢の兵たちは火を消そうと出丸へと急ぐ。
 その隙をついて、達は本丸のすぐ下へとたどり着いた。
 目の前には、織田信長や蘭丸、濃姫が控えていた。
 信長の目の前まで、がゆっくりと歩み出る。

 「さーて、やっと観光が出来る!」
 「はっ?観光!!?」

 蘭丸が目を丸くする。
 構わずは信長の目の前で立ち止まり、信長を見上げた。

 「ここ、怪我人を手当てできる場所ってあるかな?」

 の後ろには、自分の血なのか敵の血なのか、鎧や服を真っ赤に染めた謙信と呂布が並んで立っていた。







 今日の昼食は美味しいお米で作ったおにぎり定食です。
 たくあんやきゅうりのぬか漬け、鮭の身をほぐしたものまで。
 おにぎりの具はなんでもござれ。
 達一行は傷の手当をし、大阪城を観光した後、信長達と昼食を共にしていた。

 大阪城といえばアイスクリンとか食べたいなぁ。
 でもこの時代にはそんなものまだないか。

な ど考えながらは昆布のおにぎりに手を伸ばした。
 が、取る前に蘭丸がすっと昆布おにぎりを取りの皿にのせてやった。

 「あ、ありがとう。」
 「いえ、どういたしまして。」

 いつも蕎麦屋でわいわいと賑やかに食べているせいか、庶民の普通の食べ物であるおにぎりなのに、信長、光秀、秀吉らの威圧感かその静けさに落ち着かない。
 それはどうやらだけではないらしく、政宗らも若干そわそわしているように見える。

 「まさか上杉殿達が大阪城の観光に来られるなんて、想像もつきませんでした。」
 「馬鹿めが。この馬鹿が言い出したことよ。」
 「こやつが総大将じゃからな。儂らは仕方なしに従ったまでよ。」

 蘭丸の問いに司馬懿と政宗がに箸を向けながら吐き捨てるように答える。
 謙信は言わずもがな一人酒を黙々と飲んでいる。
 このままのペースで行くと酒樽一つ空けるのは軽いとみた。
 今まで飲めなかった分、ここで飲み尽くすつもりなのかもしれない。
 呂布は同様、手当たり次第におにぎりを口へと詰め込んでいく。

 「しっかし、とんだ義勇軍がおったもんじゃなぁ。古の二大軍師と謳われとる司馬懿殿に、鬼神の呂布殿、奥州の政宗殿に軍神の謙信公。物凄い面子じゃぞ。」
 「でもだってすごいんでしょう?敵を一振りで倒してしまうほどの力があるんだもの。それに、義勇軍の総大将なんでしょう?」
 「えぇまぁ。総大将は民主主義による多数決で仕方なくですけどねぇ。」

 お濃の問いにはおにぎりをほうばったまま答える。
 総大将であることや、義勇軍のメンバーについてはそれほど関心はないらしい。
 とにかく今は食べることに専念している。

 「ところで、これからどうなさるのですか?」
 「そうじゃ。、どうするのじゃ。」
 「うーん、とにかく皆遠呂智のことで困ってるんでしょ?ならその遠呂智の復活を止めようかどうしようか。」
 「いや、止めぬか!」
 「それなら今魏が何やら遠呂智軍の動きを掴んで動いているらしいですよ。」

 光秀は魏の動向をあらまし達に伝えた。
 いよいよ遠呂智復活に向けて、平清盛が動き始めた。
 その清盛が卑弥呼という少女の力を使って遠呂智を復活させることを知った魏は、卑弥呼を追って軍を動かしている、ということだった。

 「うん、なら魏と一緒に私たちも卑弥呼を追いかけてみよう!お腹いっぱいになったし。ごちそうさまでした!」

 酒樽一つとおやつのたくあんをおみやげに、達一行は卑弥呼を追いかける魏を追いかける。
 来た時同様5人並んで馬を走らせ去っていく後姿を見て、秀吉は浅く息を吐いた。

 「儂らも、そろそろ動かにゃいけませんなぁ。」
 「ックク、是非もなし。」

 信長が低く笑った。





 「たとえ君のお願いでも、一人になんてしてあげない」





2008/09/15

 <作者様より>
 総大将っていう重みって、どういうものだろうっていう。ヒロインがそういうのを感じれればいいなと。謙信と呂布はヒロインのことを妹もしくは娘くらいに思ってたらいいなと。それにしても出だしと終わりのテンションの違うこと。ちょっと無理矢理感が溢れて、ます か;






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